「生涯エンジニア“現場”で完全燃焼」
山形県 山辺町。1955年、自然豊かなこの町で生まれ、21歳で夢を追い上京した若者がいた。
彼は得意の理数系を生かそうと、世界的にも大きなシェアを誇る自動車メーカー〈本田技研工業株式会社〉に入社。HONDAのエンジニアとして約40年間勤務した。国内のみならず、フランス・ドイツなど海外にも多く赴任する多忙な日々を送る。
専門はアライメント関連。品質管理だけでなく設備開発まで手がけ、多様な車種の安全性能向上に大きく貢献した。
定年まであと少しとなった2019年。退職後の“第2の人生”を模索中に「自分は技術者としてまだ完全燃焼していない。このまま終わるのは悔しい。」と言う強い思いが湧き上がり、今までの経験を生かして起業しようと考えた。HONDAで身に付けた実践理論《一歩踏み出すことで新たな発見がある》も背中を押した。まずは、思い切ってやってみよう。
2011年。多くの方々から応援をいただき、家族の理解も得て、故郷の山形県山辺町に単身で戻り【ワタナベ自動車機器開発】を創業する。それはホイールアライメント調整器WAARD《特許出願済 番号:2012147780》 を携えての凱旋でもあった。自動車は日々の生活に欠かせない“とても便利なモノ”である。だが、毎日乗り続けるが故に車軸は歪み、走行の安全性が妨げられ、時に大惨事を引き起こす。長年生産現場で苦楽を経験し“整備”の大切さは身に染みていた。
近年、アライメントはその重要性が認識されつつあるが、高額な設備投資がかかるため整備工場にとって簡単には導入できない機器である(導入率わずか5%)。だが手頃な価格なら普及が進むのではと考え、開発されたのがWAARDである。アライメント調整を普及させることも仕事だが、自分の持つ技術を“普及”させることも大切な仕事。器械は金で買えるが、技術はお金で買えないからだ。
WAARDが普及すれば整備技術水準の向上、そして故郷の産業育成にも繋がる。今の時代だからこそ《快適性》《経済性》《安全性》を著しく向上させるホイールアライメント調整の必要性を強く説き、広く普及させなければならない。自分の命を預けている“便利なモノを”を“走る凶器”にしないために。
「山形から全国展開はもとより海外にも広げたい、それが私の夢です。」
生涯エンジニア。生涯“現場で完全燃焼”。その顔は生き生きと輝いている